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酷暑のあとに、こころの疲れ

執筆者の写真: 嘉孝 井上
嘉孝 井上
8月25日
読了時間: 3分

今年もまた、記録的な暑さの夏でした。全国各地で気温40℃を超える日が観測され、地震や豪雨による被害のニュースも相次ぎました。

夏が終わり、朝晩にわずかな秋の気配を感じ始めるこの時期、「なんとなく体が重い」「気持ちが晴れない」という声をよく耳にします。それは気のせいではなく、いくつかの理由がある自然な反応かもしれません。


天候や気圧の変化によって体調を崩す、いわゆる「気象病」は、決して気のせいではありません。気圧や気温の変化は自律神経のバランスに影響し、頭痛やだるさ、気分の落ち込みを引き起こすことが知られています。さらに、気温の上昇そのものが自殺率の増加と関連することや、猛暑が認知機能や気分の安定に影響を及ぼすことも報告されています。

つまり猛暑は、体力を奪うだけでなく、脳と心の働きにも直接影響を及ぼす可能性があるのです。今年の夏に「なんだか疲れが抜けない」と感じているなら、それは気のせいでも甘えでもなく、季節がもたらす自然な反応だと考えてよいでしょう。


もうひとつ見落としてはならないのが、災害報道を見聞きし続けることによる心理的な疲弊ではないでしょうか。

直接被災していなくても、繰り返し伝えられる被害の映像や情報に触れることで、不安や無力感がじわじわと蓄積することが研究で示されています。これは「メディアを通じた間接的なストレス反応」と呼ばれるもので、心が弱いからではなく、むしろ他者の痛みに共感する力が高いからこそ起こる反応です。ニュースを見て心が動くことは、私たちが社会や他者とつながっている証でもあります。だからこそ、時にはあえて情報から距離を置くことも、自分を守るための大切な選択です。


日本に暮らす私たちは、地震や豪雨といった自然災害と切り離せない土地に生きています。そのぶん、意識のどこかに、根深い不安を抱えている方も少なくありません。この不安は、なくそうとしてもなくならないものです。だとすると大切なのは、消し去ることではなく「うまく抱えていく」ことなのではないでしょうか。備えを整えること自体が、不安を和らげてくれます。防災用品を見直す、避難場所を確認しておくなどといった小さな営みが、漠然とした不安に輪郭を与え、少しずつ扱いやすいものに変えてくれます。不安を倒すべき敵とみなすのではなく、長く付き合っていく隣人のように捉え直すことが、心を軽くする一歩になるのではないでしょうか。


夏の疲れを労い、季節の変わり目にはいつもより少し多めに休息をとること。数多くの情報から意識的に距離を置く時間をつくること。そして、不安を「悪いもの」として排除しようとせず、そっと抱えている自分を認めること。そんな小さな積み重ねが、穏やかな秋への入り口になることを願っています。ゆっくりお茶でもいかがですか?


写真は、京都府 和束町に広がる段々茶畑です。

たいへん美しい日本の風景ですね。




<参考>

日本生気象学会「大気圧変化にヒトはどのように対応するのか?~気象病や気圧痛を予防するために~」  https://seikishou.jp/column/column-1666/


時事メディカル「気候変動が心の健康に影響」(東京大学大学院 橋爪真弘教授)https://medical.jiji.com/topics/3508


UCI News「Media exposure to mass violence can fuel cycle of distress: 3-year longitudinal study shows」(2019)(大規模暴力のメディア報道は、苦痛の連鎖を助長しうる) https://news.uci.edu/2019/04/17/media-exposure-to-mass-violence-can-fuel-cycle-of-distress-3-year-longitudinal-study-shows


Choi, E. Y., Choi, S. H., & Lee, H. (2021). Development and evaluation of a screening scale for indirect trauma caused by media exposure to social disasters. International journal of environmental research and public health, 18(2), 698. (社会的災害に関するメディア報道によって引き起こされる間接的トラウマについての研究) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7830079/

 
 
 

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