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井上嘉孝

植物の生き方とカウンセリング

 2022年の新年度が始まりました。昨年秋に洛南心理オフィスを開設して五か月,初めての春です。

 オフィス内には,いくつも植物を育てています。植物は土に根を張り,ゆっくり育ちます。寒い冬を越えて,植物たちは新しい芽を伸ばし始めました。緑に囲まれ,新芽が出てくるのを見ていただいて,来談される方のお気持ちが少しでも和んでいただけることを願っています。

 カウンセリングという営みは,悩みごとの解決のみならず,じっくりと時間をかけて来談者のことを深く理解し,その方のもつ可能性や良さを十分に伸ばしていくものだと考えています。そのためには,ご本人が変化していくペースと合っていなくてはなりませんし,カウンセラーが余計な力をかけすぎて邪魔をしてもいけません。植物の生き方が時間の流れ,季節,土と太陽,水や風といった自然環境に大いに支えられているように,私たちもまた周囲の様々なものごととの相互作用のなかで生きて,支えられるなかで,本来の力を発揮していきます。そして,今は苦しく,そして否定的に見えるようなものごとが,見方を変えてみると,冬枯れの木が地中深くに根を張って春を待っているように,実はとても大切な人生のプロセスの一環であるということもあります。

 当オフィスでは,臨床心理学の知識や技法に基づき,幅広い観点に立って,来談される方がより良い生き方を模索していくお手伝いができればと考えています。



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