臨床心理士・公認心理師を目指す大学院生さんたちと,墨と筆を使って「丸」と「一」を書くというグループワークをしています。小さいころに書道を習っていた人もそうでない人も,字を書くのが苦手な人も得意な人も,「上手く書こう」と考えずに,思い思いの「丸」と「一」を書いて(描いて)もらいます。
この作業は思いのほか面白く,奥深く,また,難しいのです。個々人の個性がとてもよく表現されて,自分と向き合う時間になります。
カウンセリングでは,自分自身のこころと向き合い,それを表現する方法として芸術療法というものがあります。絵を描いてもらったり,粘土で何かを作ったり,ぬり絵やコラージュをしたり,様々な媒体を用いるのですが,そこでとても大切なのは,作る人にとっても,見守る人にとっても,「上手下手を問わない」という姿勢です。
「丸」と「一」を書くワークでは,芸術療法と同じく,「上手く書こう」と考えずに取り組んでもらうのですが,実はこれがとても難しい。適当にやってよいわけではなく,一生懸命に自らの書と取り組みながら,それでいて上手下手にとらわれないということが非常に難しいわけです。
先日,高野山に行ってきました。そこで見つけた「丸」と「一」。見事なまでに自由でありながら,素晴らしく練り上げられています。「上手下手を問わない」表現の,ひとつの到達点を見るような思いがしました。
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