おかげさまで当オフィスも開設二周年となりました。
関係者の皆様に、こころより御礼申し上げます。
さて、カウンセリングを受けたことがある方はおそらく実感していただけるのではないかと思いますが、カウンセリングとはきわめて個別的なものです。具体的なやりとりは一人ひとり、毎回全く異なります。お気持ちを整理したり、具体的な行動や対処方法を検討したり、夢を聴かせていただいたり。
そのような個別のプロセスをそのまま公にすることはなかなかできませんが、心理臨床の現場で培われた理論や視点は、多くの人にとって役に立つ「生きる知恵」になる。できるだけ多くの人に、わかりやすく、臨床心理学の理解・関心を広げたい。そんなふうにずっと感じてきました。
そんななかで今年、よい機会をいただき、京都文教大学の先生方との共著で『図解でわかる臨床心理学』という本を作ることができました(2023年11月刊行、中央法規出版)。筆者が著した序文から以下に少し引用します。
臨床心理学を簡単なことばで、短い文字数のなかで説明するのはとても難しいものです。というのも、臨床心理学とは様々な困りごとを抱えたひとり一人のこころに寄りそう実践的な学問だからです。私たちの悩みは同じように見えて、丁寧に捉えていくと実際はひとり一人全くと言ってよいほど異なっています。
例えば「眠れない」といっても、その様子を丁寧に見てみると、Aさんは「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ。気持ちが高ぶってしまって眠れない」のかもしれないし、Bさんは「友達にあんなことを言って、どう思われたかな。くよくよ考えてしまって眠れない」のかもしれません。未来への不安が背景にあったり過去に対する後悔だったり、健全な青年の悩みかもしれないし精神的な病気の始まりにあるような不眠かもしれない。そのあたりの違いを、臨床心理学はきちんと捉えて、丁寧に具体的に関わっていきます。
要するに、人間のことやこころのことは簡単にはわからない。学ぶべきことはたくさんあるし、安易な解答やゴールはありません。ひとり一人のことばや悩みごとに丁寧に耳を傾けることが大切なのだと常々感じさせられます。
心理臨床やカウンセリングという営みはクライエントとカウンセラーの協同作業です。そこで培われたものが心理学の理論や教育を通して未来のカウンセラーを育ててくれるわけですし、苦悩するなかで得られた「生きる知恵」はどこかで困っている人のこころの支えになっているのかもしれません。
来談していただいているみなさんに改めて感謝申し上げますとともに、
本書が幅広い読者のお手元に届くことを願っております。
書籍紹介 参考URL:https://www.caresapo.jp/books/114263
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