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執筆者の写真嘉孝 井上

2023年,あけましておめでとうございます。

 あけましておめでとうございます。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 日本のお正月とドイツのクリスマスの「めでたさ」について,それぞれの国のご家庭に入らせていただいて調査研究を行ったことがあります(井上・竹中・ツィルファス,2013)。そこでは,厳かな儀式を行うにしても,一家団らんの時間を過ごすにしても,国は違えども「何気ない日常」の大切さをかみしめる時間になることが人間にとっての幸福感につながっているようでした。


 幸福感と関連してもうひとつ重要なのが,その「何気ない日常」が改めて更新されるということです。昔の日本ではお正月は「正月様」という神様が到来するときとして考えられてきました。正月様が世の中を刷新していく,愁いや汚れが清められ,古いものが新しく明けていく,そんな時として信じられていたからこそ,お正月は「あけましておめでとう」なのですね。またクリスマスは,キリストの誕生のときであり,一年で最も暗い冬至の日を過ぎて,光が到来するときです。人びとは,暗くて冷たい時間のなかで,温かい光の訪れを心待ちにするのです。そして,新年がやってきます。春はもうすぐそこです。


 臨床心理学者の河合隼雄先生は,「灯りを消さないと見えないものがある」と言っています(河合,1992)。私たちは普段,明るい光のなかで物事を見ていますが,たしかに夜空の星や灯台の光など,暗いときだからこそ,闇の中で目を凝らすからこそ,その価値を見出すことが出来るものがありますね。

 明るい気持ちで物事を見たり判断したりするだけではなくて,時として私たちは暗い気持ちに落ち込んでしまうことがあります。苦しい,暗い,トンネルの中を進むような時期があります。そんなときだからこそ,私たちは明るいところでは決して見えなかった小さな光を見出すことができるのかもしれません。



<参考>

  • 井上嘉孝,竹中菜苗,ヨルク・ツィルファス(2013)「正月様のいたところ:現代日本の一般家庭における正月の心理学的検討」.鈴木晶子,クリストフ・ヴルフ編『シリーズ 汎いのち学―Paragrana1 幸福の人類学』ナカニシヤ出版,pp.161-179.

  • 河合隼雄(1992)『こころの処方箋』新潮社.(新潮文庫,1998年)

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